食品製造の現場において製品に異物が混入する事態は絶対に避けなければいけません。万全の体制で製造を行うことが重要ですが、異物の混入を完全に防ぐのは困難です。そのため、製造後の検査が有効な対処法になります。
わずかな混入も許さない、完璧なチェックを行うことが重要です。製品の品質を保つためにも異物検査の詳細について学びましょう。
食品製造現場の衛生管理と包装時のトラブルの詳細
食品の製造現場は衛生管理に細心の注意を払っています。口に入れる物なので清潔かつ安全な状態を保つことが重要になります。特に裁断や加熱といった工程がある現場では、作業中に異物が入り込む可能性があるので衛生管理には万全の姿勢で臨んでいるのが普通です。
作業に従事する人も肌の露出がほとんど無い作業服を着用し、エアシャワーや粘着シートで汚れを取り除いています。しかし、どのような方法で予防に努めていても異物混入を完全に防ぐことはできません。些細な気の緩みやタイミングの悪さから製品に原料以外の物が入り込んでしまい、後に重大なトラブルを引き起こす結果に至ってしまいます。
これはどの製造現場でも起こる可能性があるので決して他人事ではありません。ひと口に異物混入と言ってもその内容物は多岐にわたります。食品の製造現場で発生する異物混入で最も多いのが製品の梱包材が入り込んでしまうトラブルです。
現在は多くの加工食品が個別に包装されているため、それぞれの製造ラインで梱包材を使う部分が設けられています。製品を包装する際に何らかの理由で梱包材がちぎれてしまい、その切れ端が製品と一緒になって包装されてしまうのが一般的なパターンです。
製品の加工が終わり、最後の工程である包装の際に生じる異物混入なので目視による確認が比較的容易です。また、異物と一緒に包装することで形状が歪になりやすいのも発見しやすい理由のひとつになっています。梱包材のセットに不具合があったり、包装ラインの設備に異常が生じているなどの理由で発生するトラブルです。
製造段階での異物混入は発見が難しい
食品の製造途中で異物混入が発生した場合、目視での確認は非常に困難です。異物の多くは細かく裁断されてしまうことから原型を保っていることは殆どありません。そのため、製品として成形される際も不具合が発生せず、そのまま包装されて出荷されるおそれがあります。
製造の段階で混入する異物の多くは原料の中で食用に適さない部分です。野菜くずや魚の骨といった、無害ではあるものの食べられない物が異物として混ざってしまいます。これらは製造の最初の段階である、洗浄や裁断の際に取り除かれるのが普通です。
しかし多くの製造現場ではそれらの工程は機械化されているため、わずかな異物が残ってしまうリスクは常に存在していると言えます。従来の食品製造の現場において、可食部では無いものの無害な異物は微量であればそのまま製造ラインに流してしまうことが常態化していました。
害虫やネズミのような目に見えてわかる物ではなく、有害な成分も含んでいないことを理由に影響は無いと見なされていたためです。しかし、衛生管理の重要性が広く認知された現在においてはたとえ原料由来であっても可食部でなければ除去すべき異物とされます。
しかし、細かく裁断された異物は発見が難しいので手間がかかるという新たな問題が発生しました。そのため、作業の効率化を図るために異物混入を判別する検査システムが改善されるに至ったのです。
照明を使った異物混入検査は発見が容易で効率的
異物混入の検査は基本的に目視で行います。これは製品を形作る原料と異物との区別は人の目でなければ見分けるのが難しいためです。しかし、細かく裁断されてしまうと外見では見分けがつきにくくなってしまいます。そのため、単に目で見るだけでは検査に長い時間がかかってしまい、製品の品質保持が難しくなってしまう問題がありました。
そのような中で効率的な検査として注目されたのが照明を当てる方法です。照明を製品の裏側から当てることによって、内部に混ざった微小な異物の場所がはっきりとわかるようになります。製品の原料と異物は性質が異なるので、光に当たって生じる影の濃さも変わります。
そのため、周りと影の色が異なる部分に異物があると知ることができるのです。
照明による検査方法は一度にたくさんの製品を処理できる利点があります。影の濃さの違いをひと目で判別できるので、製品をひとつずつ手に取って調べる手間がかかりません。広いスペースで複数の製品に照明を当てることによって効率的な検査が可能になります。
また、照明に当てるだけなので製品の変質がほとんど起きないのも利点のひとつです。検査のためとはいえ、形や色、成分が変わってしまうと製品としての価値が無くなってしまいます。状態を変えない方法で検査ができることは、製品のロスを減らす意味でも非常に有効です。
照明を当てる検査方法は効率的だが欠点もある
食品の品質を損なわずに異物混入の有無を知ることができる照明による検査は様々な製造現場で用いられている方法です。特別な技能が無くても設備の操作や製品の検査ができることから、効率の大幅な向上に繋がります。しかし、利点が多い方法ではあるものの決して万能ではないことも把握しなければいけません。
照明を当てる方法で見つかる異物は目視で判別できる程度の大きさの固体に限られるので、液体の異物混入を調べるには別の方法で行う必要があります。また、製品の成分とほとんど変わらない異物は陰影の差が少ないので、照明による検査は効果的ではありません。
そのため、製品の安全と品質を保つには複数の検査方法を取り入れるのが常識となっています。
製品の品質保持は社会的な信用に関わる
異物混入検査は単に製品の品質を保つだけではなく、社会的な信用を守る意味もあります。異物が入り込んだ製品が市場に出ると大きなトラブルに発展するのは避けられません。購入した人に被害が及ぶのはもちろん、製造した会社は他の製品を回収したり、製造を停止するなどの対処によって大きな損害を被ってしまいます。
また、不具合のある製品を市場に出したことによって製造現場の管理が適切ではないと見なされてしまい、社会的な信用が失われてしまうのです。一度失った信用を回復させるのは非常に困難なことから、入念な異物混入検査を行うことでトラブルの発生を未然に防ぐことが重視されます。